ハローワークの職業訓練校を活用することで、プログラミングに関するスキルや知識を身に付けられます。しかし「学べる内容がわからない」「手続きが難しそう」といった悩みを持つ方も多いでしょう。
そこで、本記事では職業訓練校のプログラミングコースを学べる内容やメリット、デメリットなどを紹介します。また、プログラミングコースの選び方や職業訓練校以外で学ぶ方法もみていきましょう。
職業訓練校とは何?
職業訓練校とは、国や地方自治体が主体となって訓練を実施し、求職者向けに就職を援助する場です。その利用者は年間30万人を超え、休職中や再就職、起業などさまざまな目的を持った方がスキルや知識の習得を目的に利用しています。
近年、この職業訓練校の需要は高まりを見せており、各都道府県の専門学校や大学、民間スクールなどで委託訓練を行うケースも増加しています。また、最近では「プログラミング」や「Web制作」など、ITに関するコースが多く新設されるようになりました。
職業訓練校のプログラミングコースで学べること
職業訓練校のプログラミングコースで学べる内容の例は次のとおりです。
- DB
- SQL
- HTML
- CSS
- JavaScript & jQuery
- Java
- PHPなど
学び方は「実技」と「学科」です。実技では、システムの設計や開発の方法を学ぶために、例題をベースとしてプログラミングスキルを習得します。また、学科ではプログラミング言語に関する概要や全体像を座学によって学ぶのです。
プログラミングコースの受講期間は3か月~6か月である場合が一般的です。ただし、一部12カ月~24カ月の長期間に渡るコースも存在します。職業訓練校ごとに学習内容や方法が異なるため、自身の希望にあうかを事前に確認してみてください。
職業訓練校でプログラミングを学習する3つのメリット
職業訓練校でプログラミングを学習するメリットは次の3つです。
- お金をもらいながら学べる
- ハローワークに通わず失業保険を受給できる
- 失業手当の受給期間が延長される可能性がある
いずれのメリットも職業訓練校でプログラミングを学習するかどうかの判断材料にもなります。それぞれの内容について詳しく解説します。
1.お金をもらいながら学べる
職業訓練校では、お金をもらいながらプログラミングを学べます。具体的には、受講手当として「日額500円」を最大40日分(合計2万円)を受け取れます。
さらに、自宅から職業訓練校までの交通費に対する通所手当として、上限で「月額4万2,500円」が受け取れるのです。ただし、電車などの公共交通機関を利用する場合は、最も安い経路に対する定期代1ヶ月分が支払われる点には注意が必要です。車やバイクなどで通学する場合も距離に応じた通所手当が支払われます。
また、金銭的な問題を抱える方は「職業訓練給付金」という制度も利用可能です。職業訓練給付金とは、再就職や転職を目指す求職者に対して「月10万円」の生活支援金の給付する制度です。
「ハローワークに求職の申込みをしている」「労働の意志と能力がある」といった特定の条件をクリアした方であれば、厚生労働省が定める要件を満たすことで給付金が受け取れます。職業訓練受講給付金支給の詳しい支給要件は、次のページを参考にしてみてください。
2.ハローワークに通わず失業保険を受給できる
職業訓練校は、失業保険の受給手続きを代行してくれます。よって、失業保険受給のためにハローワークに通う必要がありません。
本来、離職中の場合は失業認定日にハローワークに行き、転職活動の状況を職員に報告する
必要があります。その度に報告のための書類を用意しなければならず、手間と時間を要します。
しかし、職業訓練校に入校することでこれらの手続きが解消されるため、よりプログラミング学習に専念できる環境を作れるでしょう。
3.失業手当の受給期間が延長される可能性がある
職業訓練を受けることで、失業手当の受給期間が延長されるケースがあります。具体的には、失業手当の受給期間が訓練終了まで延長される場合があるのです。
ただし、延長には受給残日数などの条件があります。自身が該当するかわからない場合は、ハローワーク窓口で相談してみてください。
また、受給開始時期を早められる場合もあります。失業保険は会社都合で退職した場合は直ちに支給開始されます。しかし、自己都合で退職した場合は、7日間の待期期間に加えて2か月の給付制限期間が設けられます。
一方、職業訓練をスタートすればこの制限が解除され、すぐに失業手当を受け取ることが可能です。プログラミング学習に専念するためにも、お金の面でのメリットは大きく影響するでしょう。
職業訓練校でプログラミングを学習する3つのデメリット
職業訓練校でプログラミングを学習するデメリットは次の3つです。
- 民間スクールと比較すると学習内容が劣る
- 再就職までに時間を要する
- 希望の職業訓練を受けられるとは限らない
職業訓練校に通い始めてから後悔することないよう、デメリットの内容を正しく把握しておきましょう。
1.民間スクールと比較すると学習内容が劣る
職業訓練校でプログラミングを学習する場合、民間スクールと比較すると学習内容が劣る可能性があります。
なぜなら、職業訓練校でプログラミングを教える講師は現役のエンジニアではないケースが多いからです。また、開発の現場で働いた経験のない講師である場合も少なくありません。よって、すぐに現場で活かせるような高度なスキルや知識が必ずしも得られない可能性があります。
一方、プログラミングの民間スクールの多くは、現役のエンジニアを講師として雇っている場合が多いです。現場でしか得られないケーススタディを豊富に持つ民間スクールと比べると、学習内容に差が生じるかもしれない点はあらかじめ認識しておきましょう。
2.再就職までに時間を要する
職業訓練校でプログラミングを学ぶ場合、再就職までに時間を要する可能性があります。職業訓練校で学ぶには、筆記試験や面接による選考が行われます。その結果として不合格となるケースもあり、再応募するとなると応募時期の関係から翌月以降の申込みとなるでしょう。
さらに、プログラミングに関するコースが複数あっても併願はできません。1つのコースを申込んだら、その結果を待つまでは何もできない状況となります。
申込みや選考などの複数の段階を踏む必要がある職業訓練校は、就職に至るまでに多く時間を要することを事前に考慮して、スケジュールを立ててみてください。
3.希望の職業訓練を受けられるとは限らない
職業訓練校のプログラミングコースは、必ずしも希望の職業訓練を受けられるとは限りません。特に、Webデザインやプログラミングなどの人気コースは倍率が高く、希望しても
定員になっている可能性も高いです。
また「募集時期と希望時期が合わない」「希望するコースがある訓練校が近くにない」といった理由から、自身の状況とあわないケースも少なくないでしょう。さらに、コースは都道府県のハローワークが管轄しており、全国に同じコースが用意されているわけではありません。
各地域のコースについては「求職者支援訓練 認定コース情報」から検索できます。まずは、自身が希望するプログラミングコースについて確認してみてください。
参考:ハローワークインターネットサービス - 職業訓練検索・一覧
職業訓練校におけるプログラミングコースの選び方は3つ
職業訓練校でプログラミングを学習するメリットとデメリットを理解したところで、次はプログラミングコースの選び方をみていきましょう。具体的な選び方は、次の3つです。
- 目指す職業で活かせるスキルが身につくコースを選ぶ
- 求人の多い言語から選ぶ
- 訓練の実施時期から選ぶ
いずれか1つではなく複合的に判断して、自身の学習目的にあうコースを選びましょう。
1.目指す職業で活かせるスキルが身につくコースを選ぶ
職業訓練校のプログラミングコースを選ぶ際は、目指す職業で活かせるスキルが身につくコースを選びましょう。なぜなら、自身が目指す職業で使わないスキルや知識を習得しても
短期的には活かせない可能性があるからです。
例えば、サーバーエンジニアを目指すのであれば、最も普及している「SQL」などから学ぶほうが現実的です。しかし、Webサイトに広く利用される「JavaScript」や「PHP」などのコースを選べば、すぐには職場で活かせないかもしれません。
このようなミスマッチが生じないためにも、プログラミングコースを選ぶ際は習得したいスキルや知識を明確にしておきましょう。
2.求人の多い言語から選ぶ
職業訓練校のプログラミングコースを選び方として、求人の多い言語から選ぶのも有効です。企業からのニーズが高いとされるプログラミング言語は次のとおりです。
- Java
- PHP
- JavaScript
- Python
- Rubyなど
企業からのニーズが高い言語は、その分求人数も多くなる傾向にあります。自分が目指す職種を明らかにして、学ぶべき言語を複数ピックアップしましょう。選択肢が多いほどコースの特徴や相性を比較でき、よりフィットする職業訓練校を見つけやすくなります。
3.訓練の実施時期から選ぶ
職業訓練校でプログラミングコースは、訓練の実施時期から選ぶのも方法の1つです。職業訓練校のプログラミングコースが常に募集されているとは限りません。
特に職業訓練校に行くことを前提に退職する場合は、前述の失業手当の受給期間や開始時期などを考慮する必要があるでしょう。金銭的な課題も加味して、プログラミングコースを選んでみてください。
職業訓練校以外でプログラミングを学習する2つの方法
職業訓練校以外でプログラミングを学習する方法に次の2つが挙げられます。
- プログラミングスクールや独学
- プログラミング未経験者でも働ける職場に転職
職業訓練校でプログラミングを学ぶメリットやデメリットを考慮したうえで、他の方法についても選択肢に入れるべきです。それぞれの特徴についてみていきましょう。
1.プログラミングスクールや独学
プログラミングは、プログラミングスクールや独学でも学習は可能です。
プログラミングスクールの特徴は、職業訓練校では得にくい「現場で使えるスキルの習得」「現役エンジニアによる指導」などが挙げられます。少しでも早くエンジニアとしてスタートしたいと考える方は、プログラミングスクールも検討してみてください。
また、独学でプログラミングを勉強する場合は、インターネットや参考書などで学習をスタートすることをおすすめします。独学のメリットは課題に対して自分で調査する能力が身につく点です。エンジニアとして働く以上、この能力は欠かせません。
ただし、いずれの方法も学習にかかる費用は自身で捻出する必要がある点には注意が必要です。
2.プログラミング未経験者でも働ける職場に転職
職業訓練校以外でプログラミングを学習する方法として、プログラミング未経験者でも働ける職場への転職も検討してみてください。独自にエンジニアを育てる仕組みを持つ企業であれば、プログラミング未経験でも入社後に学べる環境があります。
現在、人手不足が深刻なプログラミング業界においてはスキルや知識よりも、まずは人材確保を優先する企業も少なくありません。転職サイトや転職エージェントを活用して、プログラミング未経験者でも働ける職場がないか調べてみましょう。
まとめ
職業訓練校でプログラミングを学ぶメリットは「お金」に関わる点が大きいことをご理解いただけたかと思います。金銭的な面で安心してプログラミングを学べる環境は、学習を深めるうえで欠かせない要素の1つです。
ただし「再就職までの時間」や「学習内容」などに関しては、デメリットになる要素があるのも事実です。これからのメリットとデメリットを踏まえたうえで、今回ご紹介したプログラミングコースの選び方を参考に、自身にあう職業訓練校のコースを探してみてください。
その結果、自身にあうコースが見つからない場合は、民間スクールや独学、未経験者でも働ける職場への転職も検討してみましょう。